禅と茶の集い

みをただし いきをととのえ すわるとき そのみ そのまま みな ほとけなり

円覚寺派前管長 足立大進老師ご遷化

円覚寺派の前管長であらせられる足立大進老師が昨月29日にご遷化なされました。

横田管長はちょうど新型ウィルス対応で東京の坐禅会が休止となったため臨終の席に間に合ったとブログで書かれておりましたが,超過密なスケジュールの中でこうしたタイミングが会うこともまさしくお二方の不思議な縁(えにし)なのでしょう。

 

足立老師をあまりご存じない方もいらっしゃると思いますので簡単にご紹介します。1932年大阪で歯科医師の次男としてお生まれになりました。

1946年に臨済宗妙心寺派のお寺で得度,1955年に花園大学ご卒業されたのち円覚寺の専門道場に掛搭され,1969年に専門道場の師家代行となりました。

1980年に円覚寺派第12代管長就任,2010年に管長退官されております。

 

また老師は書画も書かれており,骨太で素朴な書そして柔らかな画風は現管長の横田老師の書画にも相通じるものを感じます。

 

f:id:nflight2014:20200308092608j:plain

また足立大進老師が編纂された岩波文庫の「禅林句集」はその膨大な出典数と,また現代語訳や意訳を一切掲載しないという思い切った編集で知られる500頁弱にも及ぶ大作として現在も書店に並び購入できる書籍として知られております。

 

それ以外にも「おかげさま いっぱい」「ありがとう」「即今只今」など一般向けの仏心を講話集を執筆されておりました。

「坊さんの本来の仕事は抜苦与楽,現代を生きる人々の苦しみをやわらげ,楽にしてあげることです」と文中にありました。

f:id:nflight2014:20200308092649j:plain

葬式仏教を批判し,自分の葬式も無用であると言われ,最晩年も「ワシが死んでも葬儀はいらぬ、数人で荼毘にして、荼毘にしてから大悲呪を一巻読めばいい」と仰せになっていたそうです。

私も先代管長さまの色紙を掛軸にかけさせていただき,生まれて初めて大悲円満無礙神呪(だいひえんもんぶかいじんしゅ)を諷誦いたしました。大悲呪の不思議な繰り返す音律を口にしながら自分なりにご冥福をお祈りさせていただきました。

 

「ありがとう」の書籍の帯に書かれている句を最後にご紹介させていただきます。

 どこの土に なろうとままよ 落ち葉かな