禅と茶の集い

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コロナにかかっても出来る身心調整法(1) ね禅のすすめ

坐禅では「調身」「調息」「調心」,3つ揃って正しい坐禅とされています。

そのために腰骨を立てて,頭を糸で上から引っ張られているように背骨をまっずぐに立てて,足を組んで両膝をしっかりと座布団に押し付け坐骨と両膝頭で3点で体を基盤として意識することなど指導を受けます。

 

しかし膝の悪い高齢者の方は半跏趺坐でも膝に負担がかかります。

脊柱管狭窄症の方に至っては,背筋をまっすぐにすると痛みやしびれが強くなります。

そんな方々には坐禅は無理なのでしょうか?

 

もちろん椅子坐禅もありますが,そもそも坐ることすら辛い状態,例えばコロナ患者さん達でも可能な方法ってないかなっと仕事柄考えておりました。

 

入院されたコロナ患者さんは,ほとんどの場合個室管理となります。

「隔離」された状態であり,家族との面会もできず,たまに会う人間と言えば防護服に身を包んだ性別も定かでないような黄色い医療者で,その人たちも必要な処置や業務が終わると足早に部屋から出て行ってしまいます。

 

もちろん肺炎ですから息も苦しいし,点滴が打たれた腕も痛く,色々なラインに繋がれ身動きもできず,もっとひどい場合は人工呼吸器を装着されたり,手足を抑制されることするあります。

少し動くだけでも息切れがし,食欲もなく,からだじゅうが怠く,痛く,重い状態です。

 

病気に悲鳴を上げているカラダですから,「調身」なんて夢のまた夢,起き上がることや坐ることもできない状態の方さえおります。

そんな患者さんや,高齢者,障碍者の方々でもできる坐禅に代わる身心調整法はないものかと,以前から考えておりました。

 

そしてGW明けの今朝,閃きました。

そうだ「ね禅」だ!

 

そう寝たままで,呼吸しやすいような姿勢を整え,そして坐禅のような呼吸への集中をして,心の調整をすればいいんだと思いつきました。

 

「寝たままの姿勢なんてすぐに眠くなってしまうよ」とのご批判が出てくることでしょうが,ずーっと安静臥床が余儀なくされている患者さんですから眠くなんてないんですよ。

 

それどころか,これで眠れるくらいなら嬉しいと思うくらい無為な時間がずぅーっと続いている人たちですから。

 

・・・と前置きが長くなりましたが,早速やり方についてご説明します。

 

コロナにかかってもできる身心調整法 ね禅 

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1)調身  

  • 硬めのベッドもしくは布団に仰向けに寝ます。  
  • 首が痛くなければ,枕を外して行うのがお勧めです。  
  • そして両膝は立てて,お腹を緩めるのがポイントです。  
  • 両足は腰幅程度に開き,軽く踏むことを意識して下さい。
  • 可能なら腰を5~10cmくらい浮かしてから,そっとお尻を降ろして元の姿勢に戻します。  
  • 次に軽く両膝内側を合わせます。  
  • 両足裏と尾骶骨で三角形の基盤をつくり,膝頭を頂点とした三角錐をイメージしてください。
  • 股関節が固く,膝が合わせにくい方は自然に開いたままにします。   
  • 次に両手ですが体側に伸ばして,力を抜きます。  
  • 手を置いたままで両肩を痛みのない範囲で天井に向けて持ち上げます(肩甲骨が広がるように)  
  • 持ち上げるときは息を吸いながら,そして息を吐きながらゆっくりと肩を元の位置まで下ろしてきます。  
  • 1回でうまく脱力できなければ,2~3回行ってもいいでしょう。  
  • 脱力できたあとはお好きな場所に手を置いてください。  
  • 体側に伸ばしたままでもいいし,胸やお腹の上で軽く両手を組むのも落ち着いた感じがしてお勧めです。    

 

2)調息    

  • ここからはほぼ坐禅と一緒です。  
  • まずは最初に強く息を吐き出します。  
  • 声の出せない方や,周りに人がいてはばかられる場合は余り音がしないように,少し喉を絞るように抵抗感をかけると最後まで吐き切りやすくなります。  
  • 1回の深呼吸でうまく吐き切れなかったという方は,2~3回やってみましょう。 だんだん上手に吐き切れるようになります。 
  • 息だけでなく,お腹の底に溜まっている空気も,胸に抱えている不安やいらだちいもすべて吐き出してしまう気持でやりましょう。  
  • 息を出しきると,自然と鼻から新鮮な空気が一杯に入ってきます。  
  • 体の隅々まで自然な空気がいきわたっていくのを感じながら自然呼吸に戻します。  
  • あとはゆっくりと鼻から出入りする息を感じ,集中していきます。
  • 息に集中しづらいかたはお腹の膨らみ,凹みに繋意してもいいです。   

 

3)調心    

  • ゆっくりと呼吸をしていると色んな思いが頭に浮かんできます。  
  • 口から唾液が,胃から胃液が出るように,脳と言う臓器からは自然と「思い」というものが絶えず分泌されています。  
  • 寝ていてさえも「夢」という形を変えた思いが分泌されるくらいなので,止めようと思ってもなかなか止まりません。  
  • 心配事や不安,後悔と言った「思い」ほど分泌されやすく,頭の中に一杯となりやすいものです。  
  • 「思い」が浮かんだら,「今は『ね禅』の時間だから,あとで考えよう」と一旦,棚上げにしてください。  
  • 「思い」という分泌物は働き者で,しつこい性格ですが従順な面もあり「ちょっとだけ休憩してね」と何回も諭すと案外,言うことを聞いてくれます。  
  • 次々と分泌されてくる「思い」と向かい合わず,受け流して「反応しない」ことがポイントです。  
  • 目は開けていても,つぶっていても,薄目(半眼)でも結構です。  
  • 時間がある程度決まっている方が,集中しやすいと思うのでタイマーをかけてから始めるのいいでしょう。

 

日頃よりお世話になっている宝樹院の加藤泰惇和尚さんにも「ね禅」の感想をいただいております。下記からご試聴ください。

 

お坊さんとトーク 加藤泰惇和尚さん① - 禅茶ラジオ | Podcast on Spotify

 

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