禅と茶の集い

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コロナにかかっても出来る身心調整法(6) 歩禅②

Ymの提案する歩禅をお話し始めたのですが,どうしても太極拳を避けては通れず,回りくどい説明となってしまいました。

 

太極拳は中国の武術であり,またすぐれた身心調整法としても知られており「動く禅」という別名もあるくらいです。

その中でも,ゆっくりとした,安定した歩きは基本とされて繰り返し練習しております。

 

 

コロナや結核など個室管理の患者さんは,原則的に居室から外には出られない環境下に置かれます。

そのため歩くと言っても室内で,ベッドや椅子,点滴や医療機器の間にできるスペースくらいしか移動できません。

 

このため足腰の筋力も落ちやすく,何よりも歩行やバランス能力が著しく低下します。

そんな中,わずか1畳分のスペースがあるだけで,できる歩行訓練,下肢筋トレがあるとしたらどうでしょう。

 

そう,歩禅はこうした環境下でもできる身心調整法です。

あらかじめお断りしておきますが,前提条件として,普通に歩ける筋力とバランス,呼吸状態にある人向けです。

 

では実際のやり方です。

 

1)準備編

  • 鏡に上半身だけでも写しながら行うのが理想的で,入院中であれば,夕方から夜間なら窓ガラスでも代用可能なこと多いです。
  • 素足は自宅の場合は問題ありませんが病室を想定してますので履物をご準備ください。
  • 履物は上履きのような底の薄く,平たいシューズが理想的で,エアーインソールのあるランニングシューズはバランスとりづらいですし,スリッパやサンダルも不安定ですのでおやめください。
  • 服装はパジャマでも,スゥエット・ジャージでもゆったりしたずれない服装なら問題ありません。(浴衣はNGでしが,甚平タイプの病衣なら問題なしです)

 

2)基本姿勢

  • まず幅1mあり,奥行き2m程の歩けるスペースをイスや床頭台など移動させて確保します。
  • そして足つま先を揃えてまっすぐに立ちます。
  • 最初は左右の足裏に均等にかかっていた体重をゆっくりと右足に移していきます。
  • 体重が抜けた左足の踵を床から離し,次につま先を離して,左足を軽く持ち上げ,肩幅に開きます。
  • 左足を着地させる際も,つま先,踵の順でゆっくりと踏み締めていきます。
  • 足を肩幅に開いた立位から,膝を緩め,軽く腰を落とします。
  • 足の力の弱っている方はほんのごくわずかでもいいし,落さなくても結構です。
  • 両足先はハの字に開くのではなく,並行にしましょう。
  • これでゆっくり歩きの「基本姿勢」が完成です。
  • 手は脱力してダラリと下げても良いし,お腹や背中で両手を組んでもいいです。
  • 要は腰から上がすーっとまっすぐに伸びていることが肝要です。

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3)ゆっくり歩き

  • ここから前進するのですが,肩幅に開いた2本のレールの上を片足づつ踏みしめていくつもりで,ゆっくり歩きをします。
  • まずは左足に体重を移して,右足が浮いてきたら踵,つま先の順に床から右足を上げて半歩前に出します。
  • 次に右足に体重を移して,左足をゆっくりと踵から足を離して半歩前の床に下ろします。
  • これの繰り返しで,足裏の重心感覚を味わいながら、ゆっくりと歩きます。
  • 歩幅(前後)は小さめに,歩隔(横幅)は広めにとって体重の重心を左右交互に片足へしっかりと載せることが大切です。
  • 五歩を仮に基本としますが,慣れてきて,広い場所で歩けるようなら歩数を増やしていっても結構です。
  • 歩く時の目線は「平視」といって,頭をまっすぐに立て顔は正面に向けた状態で視線はまっすぐ前をみる感じです。
  • 窓ガラスや鏡があれば頭が上下しないように歩ければ理想的です。
  • イメージとして天井の低い洞窟の中を歩く感じなのですが,普通は頭を下げ腰を曲げてしまいます。しかし「ゆっくり歩き」の場合は,あくまでも上半身はまっすぐに立てて(立身中正)歩きます。
  • まっすぐとは言っても社交ダンスのような胸を張った姿勢ではなく、「含胸抜背」と表現されるように無理のない自然な姿勢をとります。
  • 五歩歩いたあと,次の半歩は基本姿勢に戻すよう足を前後に揃えます。
  • 歩き終えて基本姿勢に戻したら,そっと下に向いて自分の両足を見てみて下さい。
  • 軽く膝は曲がってますか?両足の間は肩幅くらい広がってますか?
  • 案外多いのは歩き終わると,膝はすっかりと伸びており,両足も知らぬ間に揃ってしまっているケースです。

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  • 基本姿勢に戻ったら,ゆっくりと膝を伸ばします。
  • 最後に,一番最初と同じように右足に体重を載せていき,左足を踵,つま先と軽く持ち上げて,足を閉じてつま先,踵と左足をおろしていきます。
  • 開始時の足つま先を揃えてまっすぐに立つ姿勢に戻し1セット終了です。
  • 続けて方向転換して,もう1セット行うのも良いでしょうし,慣れてきたら動きを反転させるつもりで,後ろ歩きにも挑戦するとますます筋力増強,バランス改善効果が期待でき,ますます体の動きだけに集中できます。
  • 終わった後は,太ももが筋肉痛になりやすいので膝周りも含めてよくマッサージしたり膝屈伸などするのがお勧めです。

 

上記が実際にYmが病室内でご紹介している歩行・バランス訓練で,今回は「歩禅」としてご披露させて戴きました。

 

実際に行ってみると,健康な人でも結構難しいのがわかります。

何回か,繰り返すだけでも軽い筋肉痛も起るくらい筋トレ効果もあります。

 

何よりも「歩禅」としてご紹介するのは,実際に行っているときは身体感覚に集中し,頭の中に渦巻いていた色々な思いがなくなっているのがわかります。

 

病気がよくなり退院を迎える日にしっかり歩いて自宅に帰れるようにコロナや結核に負けず「ゆっくり歩き」励行してみて下さい。

 

この「歩禅」が多くの入院患者さんに届くこと祈念しております。(Ym)