禅と茶の集い

みをただし いきをととのえ すわるとき そのみ そのまま みな ほとけなり

補遺1・・・椅子による調息

*古来から調息の実習では、②の「数息」「随息」「止」の定義にもありますように、結跏趺坐又は半跏趺坐という坐法を前提にしています。ですから椅子による調息の指導書はないというのが実情です。      
そこで参考までに私なりの考えを記しておきます。     

*椅子に坐る時、足の開きは肩幅くらいにします。膝関節の位置より股関節の位置を少し高めにして、両足の爪先・土踏まず(「足心」)・踵(「失眠」)が全て床に着くように椅子の高さを調節します。必要ならば、坐布団なども使用してください。腰は背もたれまで深々と掛けないで、浅く掛けます。そのために不安定なパイプ椅子等を避け、又掛ける処は傾斜や凹凸のないものがお勧めです。     

*具体的な方法は、「調息山」登頂のためのガイドマップに沿って進めてください。
      
一合目・二合目・三合目・四合目・五合目・五合目(木陰で小休止)までは同じです。六合目の前半は椅子では無理なので飛ばし、六合目(見晴台で大休止)の重畳法8の「○呼気・吸気共に、「赤丸」と両「足心」とに繋意」及び重畳法9の「○呼気・吸気共に、「赤丸」と両「失眠」とに繋意」に進んでください。
      
どちらかというと、「○呼気・吸気共に、「赤丸」と両「足心」とに繋意」のほうが体得し易いでしょう。

⑬で述べました鉢巻効果がありませんので、身体感覚に集中するというのが、どうしても希薄になりますが、これは致し方ありません。
      
それから七合目・八合目・九合目・十合目と進んで行くのですが、結跏趺坐や半跏趺坐で体得されるものと大分差があります。それは何故なのでしょうか?先ほど鉢巻効果がないことに触れましたが、椅子の場合のもう一つの問題点は、床(大地)からの反発力が乏しいということです。
      
結跏趺坐にしても半跏趺坐にしても尾骨と両膝頭による三角形というかなり広範囲の部分の床(大地)からの反発力があり、そのために臀部から上の身体をドッシリと支えることができているのです。
      
ところが椅子の場合は、尾骨と両足底によって支えられていますが、この支えている尾骨と両足底とに高低差があること、床(大地)からの反発力を感じる部位(両足底)と法界定印とが離れていること等から、身体のエネルギーが下に抜けてしまうのです。(結跏趺坐や半跏趺坐の場合、鉢巻効果や床(大地)からの反発力を感じる部位と法界定印とが接近しているのも、大きな意味をもっています)
     
その為に七合目から十合目及びその別峰における法界定印への繋意によって得られる「幸せ感」や「充足感」もまた、結跏趺坐や半跏趺坐に比べると、希薄になってしまうのです。
しかし椅子での坐法の弱点を少し補う方法があります。
それは、⑳の痛みの対処で述べました、左右の足の脛骨側の側面の「太白・公孫・然谷」のライン上と法界定印の各部とに繋意する方法です。是非試みてみてください。