禅と茶の集い

みをただし いきをととのえ すわるとき そのみ そのまま みな ほとけなり

現代社会人のための禅修行階梯 第一部(12)嗅覚・味覚および聴覚・体性感覚における「中核自己に備わっている宝物」は3種類

Ⅳ 嗅覚・味覚および聴覚・体性感覚における「中核自己に備わっている宝物」は3種類

 

前項での道元禅師および耕雲庵老師のお言葉は、内容が深くしかも一 般の人にはなかなか理解しがたい処(特に耕雲庵老師の言葉)がありま す。

しかもこのような言葉は、仏教の教義や法理などを集積し、そのこ とについてある程度納得していないと、理解できるものではありません。    

それに対して、「自伝的自己」が働き出す以前の機能である「中核自己」に「備わっている宝物」は、みずから体得し・味わい・使いこなすことができれば、たとえ文字をあまり知らない方であっても、無学の方であっても、簡単に理解できる言葉でなければなりません。

 

ただし、両先達のお言葉には、嗅覚・味覚および聴覚・体性感覚における「中核自己に備わっている宝物」の種類および性質・特徴を考える際のヒントがあります。

まず「宝物」の種類としましては、3つということに致しました。

次に両先達の「大心」や「正しく(い)」という大変深い内容を有してい る言葉に対しまして、「中核自己」の「いま・ここ」のみの機能という特徴 を示すことができる言葉を、そして道元禅師の「喜心」・「老心」と耕雲庵 老師の「楽しく」・「仲よく」に対しましては、両先達が表現しようとされ た意図を汲みながら、ダマシオのいう「感情」(聴覚および体性感覚と密接 な関係がある)に沿った言葉を、私は長年探し求めてきたのです。(道元禅 師の「喜心」・「老心」と耕雲庵老師の「楽しく」・「仲よく」は、「エピソー ド記憶」または「意味記憶」などの関与がありますので、ダマシオのいう 「感情」ではありません。)

 

私は、1978年から看護学生・大学生・一般市民向けに、「調身と調息の技法を応用したストレス軽減のためのプログラム」を実施してきました。(この体験をまとめて、2006年5月に京都 花園大学における「Self and No-Self in Psychotherapy and Buddhisum」という国際カンファレンスで「Application of CHOSIN and CHOSOKU Techniques to the Stress Reduction」という演題で発表しました。

 

内容は、坐禅の質を高めるための工夫(数息・随息・止そして「ナームー法・アー ウーン法・オーンー法」、更に「赤丸」への繋意など)、歩行・発声の修練、いずれも現在の私が勧めている修練の基本部分です。 奇しくも同じころ(1979年)に、ジョン・カバット・ジンによる「マインドフルネス ストレス低減法」のプログラムが、アメリカ合衆国で発表されています。