Ⅱ 「自伝的自己」が働き出す以前の感覚の中の「中核自己に備わっている宝物」について
ここで図1・2を参照してください。
「自伝的自己」が働き出す以前の感覚の領域は海面下の地下部分あるいは海の下の岩盤部分で示されています。
ここには、「中核自己に備わっている宝物」が眠っています。
そして、その「宝物」を見つけ取り出し(体得し)・味わい・使いこなすことができるようにするのが、「現代社会人のための禅修行階梯」の目的の大部分を占めています。
もちろん、「日常生活の場」の「ゲート」から「地下トンネル」に入って、その中から「宝物」を見つけ取り出し(体得し)・味わい・使いこなすためには、確かな「案内人」が必要です。
しかもこの「宝物」は、これから何度も触れますように、本来的にヒトならばどなたにでも「備わっている」ものなのです。
さらに、この「宝物」は、「自伝的自己の短所」の影響を排除して、新たな思考・行動パターンを構築する力をも有しているのです。この点につきましては、「現代社会人のための禅修行階梯と人間形成」というテーマーで、詳しく検討されます。
ところで「自伝的自己」が働き出す以前の感覚の中の「中核自己に備わっている宝物」は、先達方が工夫され現在までに伝えられた技からみて、大別して2つに分かれます。
第1は、嗅覚・味覚および聴覚・体性感覚における「中核自己に備わっている宝物」です。
第2は、視覚における「中核自己に備わっている宝物」です。
第1、第2とも「自伝的自己」が働き出す以前の感覚の中の機能に含まれているのですが、それを究明するための技(先達方が工夫され現在までに伝えられた技)に、かなりの違いがありますので、区別致しました。
視覚における「中核自己に備わっている宝物」とは何か、そしてそれを究明する技につきましては、第二部で詳しく述べることに致しまして、ここでは嗅覚・味覚および聴覚・体性感覚における「中核自己に備わっている宝物」とは何であるのかについて究明するために、先達の言葉を糸口にして考えていきましょう。