禅と茶の集い

みをただし いきをととのえ すわるとき そのみ そのまま みな ほとけなり

禅体験セミナー (12)  禅のある人生 5

禅のある人生 ―仕事や家庭生活が禅でどう変わるかー 
と題して久保田鉄漢さんにお話しいただいたものを
私(義存)の責任で要約して掲載しています。
 
 
次に、禅と家庭についてお話しさせていただきます。
今回の体験セミナーでは女性の方が多いので、
まず家庭の方からさせていただきます。
ただし、男性から見た視点ですので、あまり参考にならないかもしれませんが。
 
結婚は29歳の手前でした。妻は、同じ年でした。
妻は結婚する3年前くらいから、坐禅をしていたと思います。
結婚した次の年に長男が生まれ、その後、年子で次男が、
2年おいて三男が生まれました。
妻は2011年の震災のときまで働きましたが、
その間、30年くらい、子育てをしながら、共働きの生活でした。
私の場合は、同じように坐禅をしている仲間であるという点は
かなりの利点でした。
その点を考慮しないと、私の話は、
余りにもうまい話になりすぎると思われるかもしれません。
 
さて、私が結婚する時に、
このテキストの、禅と家庭(2)を書いておられる内田ふきさんに
「夫婦は、別人格ですよ、くれぐれもそのことを忘れないように」
と言われました。
それ以降、「夫婦は、別人格ですよ」を忠実に守ってきました。
禅では、物我一如とか、自他不二といいます。
自他不二も突き詰めれば、自分も尊いし、他も同じように尊いわけで、
夫婦も、互いが同じように尊いのです。
それでいて、別人格であるわけですが、
当時、どこまで理解していたか、自分でもよく分かりません。
 
私個人としては、夫婦喧嘩をしたことがないと思っています。
私はある面、徹底した合理主義者です。家庭不和だと損なわけです。
しかし、そうは言っても、意見の合わないことはあるわけですが。
私は、夫婦喧嘩をしない秘訣として、
これは妻と意見が合わず、折り合わない問題だと思うことは、
一切話題にしないことに決めていました。
一緒にいれば、この問題は意見が合わないということは分かるので、
それを話題にして気分を悪くしても、何の得にもならないと割り切りました。
 
妻の仕事の問題や、子供の教育など、もう意見が合わないものは、
すべて話題にしませんでした。
子供の教育でも、ほとんど子供と妻の相談に任せました。
もし、万が一失敗しても、やり直せば良いだろうと、
自分の経験で分かっていたので、進路にしても、特に口出しはしませんでした。
 
夫婦は別人格ですが、親子もまた別人格です。
子供を自分の思うようにしようなどというのは、どだい無理な話で、
20歳過ぎれば、すべて自己責任でやってもらうしかないので、
はじめからそのつもりの方が、話は簡単だと思っています。
子離れ、親離れは、今のところ、うまくいっているようです。
しかし、そういう子育てをしたため、父親の権威などは、全くありません。
昔の家父長制の時代でなくて良かったと思っています。
いずれ、子に従う年になるのでしょうから、
いまからその準備をしておいた方が良いのだろうと思っています。
 
禅で得たものが、家庭生活でどのように役に立っているか
と言われると、よく分かりませんが、
少なくとも、自他不二で、
自分以外の他者(妻や子供)を十分、尊重してきたのだと思っています。
でも、それは自分でそう思っているだけかもしれません。
共働きであったので、妻あっての私であり、
我が家庭であったのかもしれません。
あまり自慢できる話ではないような気がします。
 
続く
 
義存 合掌